どのような食事が減量しやすいか
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食事療法はあまりわかってない
食事管理・食事制限は体重減少に対して重要な介入要素です。巷には数えきれないほどのダイエット法があり、それぞれ様々な意見を持っています(互いに矛盾する情報も多い)。
学問的な立場(生理学・生化学・栄養学)から考えてみても、「これが正解」と言い切れる明確な食事療法は存在していないのが現状だと思います。in vitro(試験管内)で観察される反応と、in vivo(生体内)での事象は完全に一致していないことが予想されます。おそらく時間経過と、食事・運動療法に伴う体液量や筋肉量・脂肪量の変化により、既存の代謝設定が流動的に変化することが原因の一つと考えています。
医師の立場としても、減量に対して真摯に向き合っていない先生が多いように思えます。「カロリーを制限して・・・」「運動をできるだけやって・・・」。あまり多く勉強されているとは思えないのが現状です。当たり前ですが、医者はやはり「命に関わる疾患や病態」に注力します。そういった範囲に関してはよくよく研究されており、勉強も十分にしているため、「これが正しいと言える」方法を経験的に知ることができます。
しかし肥満に関しては直ちに命に関わる病気ではなく、患者本人の「怠け」が原因で太っていると医師は思いがちです。実際には遺伝子や環境など本人の意思とは関係ない要素で肥満が生じているにも関わらず、そのように発想しがちです。
こういった不確定な情報が多い中、どのような食事制限療法が良いのか調べた結果を書いていこうと思います。
おそらくカロリー制限はある程度正しい
私たちが1日のうち、生命を維持したり活動したりする中で消費するエネルギー量を「消費カロリー」、一方で食事や飲み物から取り入れるエネルギーを「摂取カロリー」と呼びます。
摂取カロリー>消費カロリーの状態をオーバーカロリーといい、この状態が継続すると少しずつ太っていくことになります。
上記の仕組みはまるで貯金のようです。収入>支出を維持できれば貯金ができるとの全く同様に、摂取カロリー>消費カロリーを維持すれば「貯カロリー」できます。
したがって、その逆の状態 = 赤字 を維持することができれば、蓄えたカロリーを使用するため、少しずつではありますが確実に体重を減らすことが可能であると考えます。
おそらく糖質制限はある程度正しい
あまり知られていない(なぜなら医者は食事療法に興味がないので・・・)示唆に富む重要な論文があります(Shai I, et al. N Engl J Med. 2008;359(3):229–241.)。
「糖質制限+カロリー無制限(脂質・タンパク取り放題)」 vs 「脂質制限+カロリー制限」
この論文では、322人の肥満者(平均BMI 31)を次の3群に分け、どのような経過を辿ったかを示して言います。
①「脂質制限+カロリー制限」:飽和脂肪酸<10%、コレステロール300mg/日で1500-1800kcal/日
②「地中海食+カロリー制限」:オリーブオイルやナッツ類を使用、脂質は35%未満で1500-1800kcal/日
③「糖質制限+カロリー無制限(脂質・タンパク取り放題)」:炭水化物120g/day未満、脂質・タンパクは制限なし
「糖質制限+カロリー無制限(脂質・タンパク取り放題)」が最大の減量効果を示した
下図に示す通り、「糖質制限+カロリー無制限(脂質・タンパク取り放題)」群が、他の食事制限群に比べて、最大の体重減少効果を示しました。さらに驚くべきことに、資質に関しても「糖質制限+カロリー無制限(脂質・タンパク取り放題)」が他の食事制限群に比べて(脂質制限食も含めて!)最も中性脂肪を減少させました(悪玉コレステロールであるLDLに有意差はありませんでした)。


なぜ糖質制限がこのような結果をもたらしたのか
冒頭にも書きましたとおり、食事療法に関しては不確実性を多くはらんだ領域です。その前提に立った上で、次の論文が参考になります(Ebbeling CB, et al. JAMA. 2012;307(24):2627–2634.)。
この論文は、「糖質制限群」「脂質制限群」「低GI食品群」の3つに分け、「体重減少によってどの程度安静時消費カロリー(REE)と活動時消費カロリー(TEE)が変動したか」を調べたものになります。
論文の背景
みんな体重を減らすことはできるけど、それを維持するのは難しいよね。実際1年間に体重の10%以上の減量を維持できたのは6人に1人だけらしい。でもそれってなんで?消費カロリーが変わっちゃったから?どんな食事だったら消費カロリーの減少を抑えることができる?っていう前置きで考えられた論文

これによると、脂質制限食グループは、糖質制限食グループよりも消費カロリーが300kcalも低下していることがわかりました。消費カロリーが低下し、代謝が悪くなったことで、脂質制限食は糖質制限食より体重減少の幅が少なくなってしまった、ということが考えられます。
まとめ
このような詳細なダイエット支援(食事指導・カロリー計算・運動計画の作成など)をご希望の方は、「痩身相談外来」へご予約ください。医師が医学的根拠に基づき、個別のライフスタイルや体質に合わせて、オーダーメイドのプランを作成いたします。