どのような運動が良いのか(1)
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「食事制限だけで痩せる」。
一見正しそうに聞こえるこの言葉には、大きな落とし穴があります。
人の体は、食べたものをエネルギーに変えて活動しています。
つまり、「燃やす」ことがなければ、体は変わりません。
カロリーの“消費”を伴わないダイエットは、たとえ減量に成功したとしても、いずれ限界が来て、リバウンドにつながります。
体重が減る=脂肪が落ちる、ではありません
ダイエットの基本は「消費カロリーが摂取カロリーを上回ること」です。
この原則に従えば、体重は確かに減っていきます。
しかし、体重という数字には、脂肪だけでなく、筋肉、水分、骨、内臓などの重さも含まれています。
そのため、無理な食事制限だけで痩せようとすると、体にとって必要な筋肉や骨までもが減少してしまう恐れがあります。特に注意が必要なのは、若い女性です。
若い女性に多いリスク:骨量の減少
近年、紫外線対策が極端になっている若い方が目立ちます。
もちろん、日焼けや皮膚の老化を防ぐための紫外線対策は大切ですが、過度に日光を避けすぎることも問題です。
日光に当たることで、私たちの皮膚ではビタミンDがつくられます。
このビタミンDは、カルシウムの吸収や骨の代謝にとても重要な働きをしています。
つまり、日光を避ける生活をしていると、骨が弱くなるリスクが高くなるのです。毎日わずか5〜10分程度でもよいので、日光を浴びる時間をつくることが、健康的な骨を保つためには大切です。
さらに、極端な食事制限や急激な減量は、月経不順を引き起こし、女性ホルモンのバランスが崩れることで骨密度がさらに低下します。
これらが重なると、将来的に骨粗しょう症になってしまう可能性が高くなります。
痩せることは目的ではなく、「健康になるための手段」であるべきです。
そのためには、運動を正しく取り入れることが欠かせません。
健康的に痩せるには、適切な運動が必要です
体脂肪を効率的に減らし、筋肉や骨を守りながら体を引き締めるには、運動が欠かせません。
とくにおすすめしたいのが、「ややきついけれど、無理なく続けられる」くらいの運動です。
具体的には、1日に30分程度が理想的です。
ただし、30分を一気にやる必要はなく、10分ずつを3回に分けても、同じような効果が得られることが分かっています。
実際に、短時間の運動を分割して行っても、お腹まわりのサイズ=腹囲が減ったり、血圧が下がったりする効果が報告されています。
運動強度はどうやって決める?
運動をするうえで、「どのくらい頑張ればよいのか」という目安が必要です。
そのときに役立つのが「カルボネンの式」です。
これは、年齢と安静時の心拍数をもとに、自分に合った運動時の目標心拍数を計算する方法です。
次のように計算します。
【カルボネンの式】
たとえば、30歳の男性で、安静時の心拍数が1分あたり70回とします。
初心者向けの運動強度40パーセントからスタートする場合は、以下のようになります。
ステップ1:最大心拍数を出す
220 − 30 = 190
ステップ2:心拍数の差を出す
190 − 70 = 120
ステップ3:運動強度をかける
120 × 0.4 = 48
ステップ4:安静時心拍数を加える
48 + 70 = 118
この場合、運動中の目標心拍数は、およそ1分あたり118回になります。
もし慣れてきて、もう少し負荷を上げたいときは50パーセント〜60パーセントを目指してもよいでしょう。
このときの目標心拍数は130回から142回程度になります。
心拍数の測り方
運動中の心拍数を測るには、スマートウォッチなどのデバイスを使うのが最も簡単です。
最近ではアップルウォッチのほか、シャオミなど手ごろな価格の機器もたくさん出ています。
もし持っていない場合でも、ジョギングやウォーキング中に信号待ちなどで立ち止まったタイミングで、手首の脈を15秒間測る方法があります。
その数を4倍し、さらに10を足してください。
この「10」という数値は、立ち止まっている間に心拍数が少し下がってしまっていることを補正するためのものです。
たとえば、15秒で32回の脈を感じたら
32 × 4 = 128
128 + 10 = 138
この場合、138回/分となり、理想的な運動強度といえるでしょう。
最後に
「毎日1万歩以上歩いているのに痩せない」という方も多いですが、その理由のひとつに、運動の強度が足りていないことがあります。
ただ歩くだけではなく、「心拍数が120〜140になるような歩き方」を意識することで、脂肪燃焼効果は飛躍的に高まります。
無理な減量は、筋肉や骨を犠牲にしてしまいます。
私たちが目指すのは、「数字としての体重を減らすこと」ではなく、「質のよい体を作ること」です。
そのためには、正しい食事とあわせて、適切な運動が不可欠です。
次回の投稿では、ウォーキングとランニングの違い、運動の注意点などについて詳しくご紹介します。