ウゴービが体重10%減少、心血管疾患リスクを20%低下

肥満症治療薬「ウゴービ(成分名:セマグルチド)」に、心血管イベントのリスクを有意に低下させる効果があることが、米国クリーブランドクリニック主導の国際共同試験により示されました。
■ ウゴービとは?
ウゴービは、GLP-1受容体作動薬の一種で、週1回の皮下注射により食欲を抑え、体重を減らすことができます。これまでにも2型糖尿病治療薬「オゼンピック」として知られていましたが、ウゴービでは、より高用量(2.4mg)が使用され、肥満症治療を目的に用いられます。
■ 心血管疾患リスクを20%低下
今回の研究では、肥満または過体重で糖尿病のない45歳以上の患者1万7,604人を対象に、ウゴービ2.4mgを週1回投与する群とプラセボ群にランダムに割り付け、約3年半(平均39.8ヵ月)追跡しました。
その結果、心血管疾患による死亡・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中のリスクが、ウゴービ群では20%低下していたことが示されました(ハザード比 0.80、P<0.001)。
■ 体重・代謝指標も改善
ウゴービ投与群では、
- 体重が平均9.4%減少(プラセボ群は0.9%減少)
- 炎症・血糖・血圧・脂質・ウエスト周囲径などのリスク因子も明らかに改善
これにより、肥満症に対する薬物治療が心血管疾患の予防にも効果があることが、初めて大規模な国際試験で示されました。
■ 副作用と注意点
副作用としては、吐き気・下痢などの胃腸症状が多く、ウゴービ群での治療中止率はやや高く(16.6%)、慎重な導入が求められます。重篤な膵炎や腎障害のリスクは認められませんでした。
■ 重要な意義
これまで「高血圧や脂質異常症は治療しても、肥満そのものを心血管リスクとして薬で治療する」という考えは限定的でした。しかし今回の研究により、肥満への直接的治療が心血管病予防に直結するという、医療上の新たな意義が証明されたのです。
参考文献
- Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. NEJM, 2023.
- Cleveland Clinic Newsroom, 2023年11月11日発表