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カテゴリー:脳神経内科 | 監修:池川内科・神経内科 | 公開:2026年5月

TIA(一過性脳虚血発作)の警告サイン|消えても受診すべき理由

TIA(一過性脳虚血発作: Transient Ischemic Attack)は、症状が 数分〜数十分で完全に消える ため、見過ごされがちな脳の発作です。しかし TIA を起こした方の 10〜20% が 90 日以内に脳梗塞を発症 し、その半数は最初の 48 時間以内に起こると報告されています。「治ったから大丈夫」ではなく、「次に来る脳梗塞の警告」 として、できるだけ早期の受診が必要です。本コラムでは、TIA の症状、危険度評価、なぜ早期受診が重要なのかを脳神経内科専門医が解説します。

① TIA とは何か

TIA は、脳の血管が一時的に詰まることで脳血流が低下し、神経症状が現れる発作です。梗塞(脳組織が壊死する)に至る前に血流が回復する ため症状が消えますが、原因となる血管の問題は残っています。

最新の定義(tissue-based)では、症状が消えていても MRI で梗塞像があれば脳梗塞、なければ TIA と区別します。つまり「TIA と思っていたが実は小さな脳梗塞だった」というケースもあり、MRI 評価の重要性が高まっています。

② 代表的な症状

TIA は脳のどの血管が一時的に詰まったかで症状が変わります。次のような症状が 突然・短時間(数分〜数十分) 現れて消えるのが特徴です。

TIA で見られる代表的な症状(突然・一過性)

  • 片側の手足が動かしにくい・しびれる(運動麻痺・感覚障害)
  • ろれつが回らない・言葉が出ない(構音障害・失語)
  • 片目が見えなくなる・視野が欠ける(一過性黒内障・視野欠損)
  • 急なめまい・バランス障害・歩行困難
  • 物が二重に見える(複視)
  • 飲み込みにくい・むせる(嚥下障害)

「治った=もう大丈夫」ではなく、「次に来る発作の警告サイン」 として扱うのが医学的な常識です。

③ TIA を見過ごすことの危険性

TIA 後の脳梗塞発症リスクは時間とともに高まります。具体的な数字を知っておくことで、受診の判断が変わります。

  • TIA 後 48 時間以内 の脳梗塞発症率:5〜10%
  • TIA 後 90 日以内 の脳梗塞発症率:10〜20%
  • 適切な評価・治療開始で、再発リスクを 80% 減らせる 報告あり

逆に言えば、TIA の段階で受診・治療開始すれば、脳梗塞を防げる可能性が非常に高いということです。

④ ABCD2 スコア——リスク評価の目安

TIA 後の脳梗塞リスクを評価する標準的なスコアです。ご自身で判断する目安にもなります。

  • Age:60 歳以上(1 点)
  • Blood Pressure:140/90 mmHg 以上(1 点)
  • Clinical features:片麻痺あり(2 点)/構音障害のみ(1 点)
  • Duration:60 分以上(2 点)/10〜59 分(1 点)
  • Diabetes:糖尿病あり(1 点)

合計 4 点以上 は早期入院が推奨される高リスクとされます。とはいえスコアに関わらず、TIA を疑う症状があれば受診を優先してください。

⑤ 受診のタイミング

TIA を疑う場合の対応は、症状の状態によって変わります。

状況別の受診の目安

  • 症状が現在も続いている:直ちに 119 番(救急車)。脳梗塞発症中の可能性。
  • 症状が完全に消えた直後(数時間以内):救急外来 or 脳神経内科を当日受診。
  • 消えた症状が 24 時間以内:その日のうちに脳神経内科を受診(電話で当日枠の相談を)。
  • 1 週間以内に同様の症状を繰り返している:早急に脳神経内科を受診。

⑥ 当院での評価の流れ

当院では TIA が疑われる方に次のような評価を行います。

  • 問診(症状の起こり方・持続時間・既往歴・服薬・心房細動の有無)
  • 神経学的診察
  • 血液検査(凝固系・糖・脂質・腎機能)
  • 心電図・ホルター心電図(心房細動の検索)
  • 頚動脈エコー(頚部血管狭窄の評価)
  • 頭部 MRI / MRA(連携先で予約・速やかに撮影)
  • 抗血小板薬・抗凝固薬の開始判断

よくあるご質問

Q. 救急車を呼ぶレベルですか?
A. 現在も症状が続いていれば 直ちに 119 を。完全に治っている場合は当日中の受診で対応可能ですが、できるだけ早く(数時間以内)にお願いします。

Q. 過去に TIA があったと思います。今からでも受診すべき?
A. 過去の TIA であっても、その後の再発予防策が立てられていなければ、ぜひご相談ください。血管評価・服薬調整で再発リスクを下げられます。

Q. 心房細動があると言われていますが、関係しますか?
A. 大いに関係します。心房細動による塞栓は TIA・脳梗塞の主要な原因の一つです。抗凝固薬(DOAC)の適応評価が必要です。

Q. 検査では何がわかりますか?
A. MRI で梗塞の有無、MRA・頚動脈エコーで血管狭窄、心電図で不整脈、血液検査で凝固異常を確認します。原因に応じた予防策を立てられます。

まとめ

TIA は 「症状が消えた=治った」ではなく「次の発作の警告」 です。48 時間以内の脳梗塞発症リスクが特に高いため、症状が一過性であっても できるだけ早く(理想は 24 時間以内) の脳神経内科または救急受診をお勧めします。早期評価で原因を特定し、適切な治療を始めることで、脳梗塞の再発を高い確率で予防できます。

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症状が現在も続いている場合は 119 を優先してください。
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