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カテゴリー:脳神経内科 | 監修:池川内科・神経内科 | 公開:2026年6月

パーキンソン病の早期サイン|ふるえより前に現れる5つの変化

パーキンソン病といえば「手のふるえ」が知られていますが、実は 運動症状が出る 5〜20 年前から 別のサインが現れていることが多くあります。これを「前駆症状」と呼びます。早期に気づくほど、治療や生活調整の選択肢が広がり、進行を緩やかにする可能性も高まります。本コラムでは、当院の脳神経内科専門医が、パーキンソン病の前駆症状と早期受診の意義を解説します。

① 運動症状より前に現れやすい5つのサイン

パーキンソン病の原因物質(α-シヌクレイン)の蓄積は、脳の運動を司る部位より 嗅球・延髄・脳幹 から始まることが分かっています。そのため、運動症状より前に次のような前駆症状が現れます。

パーキンソン病の代表的な前駆症状(運動症状の数年〜十数年前)

  • ① 嗅覚の低下:においが分かりにくい。コーヒー・カレー・石鹸の香りに気づかない
  • ② 頑固な便秘:以前と明らかに変わった頑固な便秘(週 3 回未満が数年続く)
  • ③ レム睡眠行動異常(RBD):寝言・夢の中で叫ぶ・布団から落ちる・配偶者を蹴る
  • ④ 小字症:書く字が次第に小さくなる、ペン先が紙から離れない感覚
  • ⑤ 仮面様顔貌:表情が乏しいとご家族から指摘される、まばたきが減る

② レム睡眠行動異常(RBD)は最も特異的

前駆症状の中でも RBD は特にパーキンソン病に進む可能性が高い ことが知られています。RBD と診断された方のうち:

  • 10 年後に約 40〜50% がパーキンソン病・レビー小体型認知症・多系統萎縮症(MSA)のいずれかを発症
  • 14 年後には 90% 以上 が何らかの α-シヌクレイン蓄積疾患を発症

「単なる寝言」と見過ごさず、ご家族から「夜中に怖い夢を見て暴れている」と指摘されたら、一度脳神経内科でご相談ください。

③ これらだけでパーキンソン病とは限らない

上記の症状は、それぞれ単独では他の原因でも起こります。

  • 嗅覚低下 → 副鼻腔炎・加齢・コロナ後遺症など
  • 便秘 → 食事・運動不足・薬剤性
  • 寝言 → ストレス・断片的なもの
  • 小字症 → 加齢による手指の機能低下
  • 表情の乏しさ → うつ病・甲状腺機能低下症

ただし、複数の症状が重なる、徐々に進行する 場合は、脳神経内科での評価が安心です。

④ 早期受診の意義

パーキンソン病は、運動症状が出てからでは黒質ドパミン神経細胞の 50% 以上が既に失われている と言われています。前駆症状の段階で評価できれば、以下のメリットがあります。

  • 運動療法・筋トレ・有酸素運動による進行抑制効果が期待できる時期
  • うつ病・自律神経障害など合併症の早期対応
  • 将来の生活設計(仕事・運転・住環境)の準備
  • 新薬・治験への参加可能性
  • 家族歴がある方は、リスク把握による安心

⑤ 当院での評価の流れ

パーキンソン病の早期評価は、特殊な検査ではなく 丁寧な問診と神経学的診察 が中心です。

  • 問診(症状の経過・睡眠・嗅覚・便通・服薬)
  • 神経学的診察(筋強剛・無動・振戦・姿勢反射)
  • 嗅覚検査(簡易検査キット)
  • 必要に応じて頭部 MRI、MIBG 心筋シンチ、DAT スキャン(連携先で)
  • 血液検査で甲状腺機能・銅・セルロプラスミン等を除外

⑥ もし診断がついた場合の治療

パーキンソン病は 適切な治療で長期間、生活機能を保てる病気 です。当院では、以下のような治療を組み合わせて提供しています。

  • 薬物療法(L-DOPA、ドパミンアゴニスト、MAO-B 阻害薬など)
  • 運動療法(リハビリテーション科併設)
  • 合併症のフォロー(便秘・起立性低血圧・うつ・睡眠障害)
  • 進行期には DBS(深部脳刺激療法)の検討(連携先で)

よくあるご質問

Q. 検査は何をしますか?
A. 問診と神経学的診察が基本です。必要に応じて MRI・嗅覚検査・MIBG 心筋シンチなどを組み合わせます。痛みを伴う検査は少なく、初診で大体の方針が立ちます。

Q. 家族にパーキンソン病の人がいます。私もなりますか?
A. 家族歴があると発症率が若干上がりますが、ほとんどは遺伝しません(孤発例が 90%)。気になる症状があれば一度ご相談ください。

Q. 寝言で配偶者を蹴ったことがあります。受診すべき?
A. RBD の可能性があります。睡眠時に明確な行動異常を伴う寝言は、ぜひ一度脳神経内科でご相談ください。

Q. 嗅覚が落ちたかもしれない、と最近気づきました。
A. それだけでパーキンソン病とは言えませんが、他の前駆症状の有無を一緒に確認することで、リスクがある程度わかります。簡易嗅覚検査も可能です。

Q. 早期発見で本当に進行を遅らせられますか?
A. 完全に止めることはできませんが、運動療法・薬剤の適切なタイミングでの導入により、生活機能を長く保てることが示されています。

まとめ

パーキンソン病は 手のふるえより前に、嗅覚低下・便秘・寝言・小字症・表情の乏しさ といった前駆症状が現れることが多い病気です。これらは単独では別の原因でも起こりますが、複数が重なる・徐々に進行する 場合は脳神経内科での評価が安心です。早期に気づくほど、運動療法・治療・生活面の準備の幅が広がります。ご本人だけでなく、ご家族からの「最近こんな変化があった」というご相談も大切です。

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