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カテゴリー:脳神経内科 | 監修:池川内科・神経内科 | 公開:2026年5月

加齢の物忘れと認知症の違い|何をきっかけに受診すべきか

「最近、人の名前が出てこない」「同じ話を何度もする」——多くは加齢に伴う自然な変化ですが、体験そのものを忘れる・判断ができない といった変化は、認知症の初期サインのことがあります。本コラムでは、加齢と認知症の物忘れの違い、軽度認知障害(MCI)という"中間"の段階、受診の目安、当院での評価の流れを脳神経内科専門医がまとめます。早期に気づくほど、生活機能を保つ選択肢が広がります。

① 加齢の物忘れ:脳の自然な変化

40 代以降、人の名前や固有名詞が出にくくなる、しまった場所を一時的に忘れるなどは 誰にでも起こる正常な変化 です。記憶の "引き出し" を開ける速度が落ちるだけで、引き出しの中身(体験そのもの)は保たれています。

加齢の物忘れに共通する特徴は次のとおりです。

  • ヒントがあれば思い出せる(「あの俳優、ほら⋯」→「あ、◯◯さん!」)
  • 体験そのものは覚えている(「昨日、孫と来た公園」は思い出せる)
  • 日常生活・仕事に大きな支障が出ない
  • 本人も "物忘れがある" ことを自覚している
  • 進行が緩やかで、半年〜1 年で大きく変化しない

② 認知症のサインに近い物忘れ

同じ "物忘れ" でも、認知症では 体験そのものが抜け落ちる判断力や段取りが崩れる という質的な変化が現れます。本人の自覚が薄く、ご家族が先に気づくことが多いのも特徴です。

早めの受診を検討したい "質的な変化" のサイン

  • 食事をしたこと自体を忘れる("体験ごと" 忘れる)
  • 同じ質問を短時間に何度も繰り返す
  • 慣れた道で迷う、料理の段取り(並行作業)が崩れる
  • 金銭管理・約束の管理・薬の飲み忘れが目立つ
  • 性格・意欲の変化(怒りっぽい/意欲低下/無関心)
  • 同じものを何度も買う、財布や通帳をなくす頻度が増えた
  • ヒントを出しても思い出せない

③ MCI(軽度認知障害)という"中間"の段階

近年は、加齢でも認知症でもない 軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment) の段階で気づくことが重要視されています。MCI は次のように定義されます。

  • 本人や家族が認知機能の低下を感じている
  • 認知機能検査で同年代と比べてやや低下している
  • 日常生活はおおむね自立している
  • 認知症の診断基準は満たさない

MCI の方の 年間 5〜15% が認知症へ進行 する一方、生活習慣の改善・治療可能な原因の特定により 元の認知機能に戻る方もいます。「まだ大丈夫」と先送りせず、MCI 段階で評価を受ける意味は大きいと言えます。

④ 早期受診で得られるメリット

認知症は "進んでから対応する病気" ではなく、早期に評価することで対応の幅が広がる病気 です。早期受診により次のような利点があります。

  • 治療可能な原因の発見:甲状腺機能低下症・ビタミン B12 欠乏・正常圧水頭症・うつ病・薬剤性など、改善できる原因も少なくありません
  • 進行抑制薬の選択肢:アルツハイマー型では早期ほど薬物療法(コリンエステラーゼ阻害薬、レカネマブ等)の効果が期待できます
  • 生活面の準備:運転・財産管理・成年後見・介護保険申請など、ご本人の意思が反映できるうちに準備が進められます
  • ご家族の心の準備と知識:診断がつくことで、ご家族の関わり方や利用できる支援サービスが整理できます

⑤ 当院での評価の流れ

池川内科・神経内科では、脳神経内科専門医が以下の流れで評価を行います。所要時間は初診で 60〜90 分程度、検査内容は症状に応じて調整します。

  • 問診:本人・ご家族から、症状の経過・生活面の変化・既往歴・服薬内容を伺います
  • 認知機能検査:MMSE、HDS-R などの簡易検査(10〜15 分)
  • 血液検査:甲状腺機能、ビタミン B12、肝腎機能などで治療可能な原因を除外
  • 頭部画像検査:頭部 CT または MRI(必要に応じて連携医療機関で実施)
  • 診断・治療方針の説明:結果を踏まえ、ご本人とご家族に方針をご説明します

脳神経内科外来は 毎週金曜午前 に行っています。完全予約制ですので、お電話または予約サイトからご予約ください。

よくあるご質問

Q. 本人が受診を嫌がっています。どうすれば?
A. 「健康診断」「血圧チェック」「家族の付き添いで」など、受け入れやすい理由でご来院いただいて構いません。診察の中で自然に評価が可能です。無理に "認知症の検査" と伝える必要はありません。

Q. 物忘れがあるけれど、本人は気にしていません。
A. 認知症では本人の自覚が乏しいケースが多く、これも受診を検討する理由になります。ご家族が気になる変化があれば、ご家族のみで一度ご相談に来ていただいても結構です。

Q. 検査は必ず MRI まで必要ですか?
A. すべての方に MRI が必須ではありません。問診と血液検査・認知機能検査で方針が立つこともあります。画像検査が望ましい場合は、連携先の MRI 完備施設にご紹介します。

Q. 介護保険の申請も相談できますか?
A. はい。診断書の作成、ケアマネージャーや包括支援センターとの連携もご相談いただけます。当院は介護医療院も併設しており、地域の介護資源と連携しています。

まとめ

"年齢のせい" と "認知症の始まり" の違いは、「忘れ方の質」と「生活への影響」 にあります。体験ごと忘れる・判断や段取りが崩れる・性格が変わった——こうした変化が 半年〜1 年の間に明らかに進んでいる なら、一度ご相談ください。MCI の段階で気づければ、生活機能を保ち、治療可能な原因に対処できる可能性が広がります。気になる変化があったときは、ご本人だけでなく ご家族からのご相談も歓迎 です。

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