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カテゴリー:脳神経内科 | 監修:池川内科・神経内科 | 公開:2026年6月

手足の慢性的なしびれ|末梢神経障害の原因と検査の進め方

手足のしびれは、脳・脊髄など 中枢 の問題と、末梢神経自体の問題(末梢神経障害)の両方を考える必要があります。長く続くしびれは、糖尿病・ビタミン欠乏・薬剤性・自己免疫など、末梢神経障害が原因のことも多くあります。原因によっては 治療可能 であり、早期発見が機能回復のカギです。本コラムでは、末梢神経障害の主な原因、当院での検査の流れ、受診の目安を脳神経内科専門医が解説します。

① 末梢神経障害とは

末梢神経は、脳・脊髄から手足の末端まで信号を伝える「電線」のような構造です。この電線が傷つくと、感覚(しびれ・痛み)、運動(力が入りにくい)、自律神経(汗・血圧調整)の症状が現れます。

しびれの分布パターンには次の特徴があります。

  • 手袋・靴下型:両手両足の末端から左右対称に始まる(糖尿病性・ビタミン欠乏)
  • 片側性:神経根や絞扼性ニューロパチー、脳卒中の可能性
  • 多発性:複数の神経が個別にやられる(血管炎・サルコイドーシスなど)
  • 近位優位:太もも・上腕から始まる(GBS・CIDP の一部)

② 主な原因——よく見るもの

末梢神経障害の原因は 100 以上あるとされますが、よく見るものは次のとおりです。

末梢神経障害でよく考える原因

  • 糖尿病性ニューロパチー:最も頻度が高い。手袋・靴下型のしびれ、足の感覚低下
  • ビタミン B1・B12 欠乏:胃切除後・偏食・アルコール多飲
  • 薬剤性:抗がん剤(パクリタキセル等)、結核治療薬(INH)、HIV 治療薬
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP):自己免疫性、ステロイド・IVIg で改善
  • ギラン・バレー症候群(GBS):急性に進行、入院加療が必要
  • 遺伝性ニューロパチー:シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)など
  • 甲状腺機能低下症:見落とされやすい原因
  • アルコール性:大量飲酒の長期影響
  • 絞扼性ニューロパチー:手根管症候群・肘部管症候群など局所的

③ 受診の目安

次のいずれかに当てはまる場合は、脳神経内科の受診をおすすめします。

  • しびれが 3 か月以上 続いている
  • 徐々に範囲が広がっている、強くなっている
  • 力が入りにくい・物を落としやすい・つまずきやすい
  • 触覚・痛覚・温度感覚が鈍くなった
  • 急に進行している(数日〜数週間)→ GBS の可能性、早めに受診
  • 同時に立ちくらみ・便秘・発汗異常がある(自律神経障害合併)

急に進行するしびれは GBS など治療を要する病気のサインのことがあり、入院加療が必要なケースもあります。

④ 当院での検査の流れ

末梢神経障害の評価は 問診と神経学的診察 が最も重要です。当院では次の手順で進めます。

  • 問診:症状の経過・分布・進行速度・既往歴・服薬・飲酒歴・職業
  • 神経学的診察:感覚(触覚・痛覚・振動覚)・筋力・腱反射・自律神経
  • 血液検査:HbA1c(糖尿病)、ビタミン B1/B12、甲状腺機能、自己抗体、免疫グロブリン
  • 必要に応じて尿検査・髄液検査
  • 神経伝導検査:神経の電気的な伝わり方を測定(連携先で実施)
  • 必要に応じて MRI・神経生検

原因によっては、当院での治療開始または専門医療機関への紹介を判断します。

⑤ 治療の方向性

末梢神経障害の治療は 原因によって全く異なります。代表的なケースを挙げます。

  • 糖尿病性:血糖コントロール・対症療法(プレガバリン・デュロキセチン)
  • ビタミン欠乏:ビタミン補充で改善(早期介入が重要)
  • CIDP:ステロイド・IVIg・血漿交換で改善
  • 薬剤性:原因薬剤の中止・変更
  • 絞扼性:装具・神経ブロック・手術(整形外科紹介)
  • 遺伝性:根本治療はないが、リハビリで機能維持

⑥ しびれが完全に治らないケースもある

残念ながら、原因によっては 完全に元に戻らない こともあります。しかし:

  • 原因の特定により、進行を止めることができる
  • 対症療法(神経障害性疼痛薬)で QOL を上げることができる
  • リハビリで機能維持・転倒予防ができる

「治らないかも」と諦めず、まずは原因を整理することから始めます。

よくあるご質問

Q. しびれは治りますか?
A. 原因によります。代謝性(糖尿病・ビタミン欠乏)は原因治療で改善することが多く、自己免疫性も免疫療法で改善するケースがあります。一方で遺伝性や進行した糖尿病性では完全治癒は難しいこともありますが、進行抑制と症状緩和は可能です。

Q. 整形外科と脳神経内科、どちらに行くべき?
A. 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症など 骨が原因 なら整形外科、手袋・靴下型や全身的なしびれなら脳神経内科がスムーズです。判断に迷う場合は当院でもまず評価できます。

Q. 神経伝導検査は痛いですか?
A. 軽い電気刺激を与えて反応を測ります。痛みは「電気がピリっと走る感覚」程度で、お子さんでも受けられる検査です。

Q. 血液検査だけで原因が分かりますか?
A. 多くの原因(糖尿病・ビタミン欠乏・甲状腺・自己抗体)は血液検査でわかります。しかし、神経伝導検査や画像検査が必要なケースも多く、当院では段階的に進めます。

Q. しびれを楽にする薬はありますか?
A. 神経障害性疼痛にはプレガバリン(リリカ)・デュロキセチン(サインバルタ)などが効くことがあります。原因治療と並行して使います。

まとめ

3 か月以上続く手足のしびれは、末梢神経障害のことが多く、原因を特定することで治療方針が変わります。糖尿病・ビタミン欠乏・自己免疫性など、治療可能な原因 も少なくありません。徐々に進行している、力が入りにくい、急に悪化した——こうした変化があれば、ためらわず脳神経内科にご相談ください。

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